はじめまして、不動産会社専門のM&A仲介サービス、レスマを運営する株式会社インフィニティライフの伊礼です。
弊社は自社でも不動産仲介業を営んでおり、M&A仲介のノウハウと掛け合わせて、不動産会社専門のM&A仲介サービスを提供しています。
アドバイザーも不動産業界に精通しており、宅建取得者も多くいます。業界ごとの色や特徴に合わせて的確にアドバイスをし、成約に導いています。
不動産会社を経営する方の中には、「自社を売却する」「事業を切り離す」「M&Aをする」ということは大きな会社がすることで、自分には関係がない…と感じている方が多くいらっしゃると感じています。
しかし、
・不動産会社を閉業したいが、従業員やお客さんのことを考えるとやめることができない
・体調面に不安があるが、引き継ぎ手がいない(後継者不足)
・別の事業に集中したい
という方にとっても、株式売却・持分譲渡・事業売却は1つの選択肢となります。売却やM&Aをすることとは、どのようなことなのか、それにより得られるものは何なのか、当ブログではご紹介していきます。
今回は、東京23区内のとある不動産業者のM&Aをご紹介いたします。
売り手さまからお問い合わせをいただいてから、実際の譲渡に至るまでのプロセスを是非ともご覧ください。
目次
・事務所の所在地
東京都23区
・業種
賃貸管理
・従業員
1名:オーナー様のみ
・直近期売上高
約900万円
この売り手さまからご連絡をいただいたのは、2024年の1月ごろでした。
親族の介護等で時間を取られることが増え、このままでは継続的な運営ができないので事業をたたむことも考えなければいけない、と考えていたときに弊社のサービスが目にとまり、M&Aを検討していただきました。
売り手さまは50代で、自分が完全に動けなくなる前に選択肢を考えたいということで譲渡を考えていらっしゃいました。
それでも売り手さまはまだまだお仕事を頑張っていきたいという思いもありましたので、もし買い手さまが希望であればサポートとして引き続き事業に携わりたいと仰っていました。
売り手さまからはお電話でお問い合わせいただき、早速打ち合わせをされたいとのことで数日後に売り手さまの事務所でお話を伺わせていただきました。
M&Aを検討することが初めてとのことでしたので、事業の売却方法や交渉の流れ、相場の目安、ご準備いただく書類や資料など丁寧に説明をさせていただきました。
今回の売り手さまのようにM&A自体が初めてという方がほとんどですのこの初回のお打ち合わせでご不明点やご不安を解消していただけるようご案内しています。
詳しくお話を伺うと、管理物件がメインの譲渡対象となり、各大家様が安心して次の経営者に引き渡せるようにしたい、とのことでした。
M&Aでは所有不動産や管理物件、引継ぎ人材が主な譲渡資産となりますが、今回は管理物件(オーナー様の引継ぎ)が主な譲渡対象となりました。
ここで、「会社じゃなくても売れるのか?」とご質問いただきました。
会社でなく、個人事業の場合は宅建業免許が引き継げませんが管理物件だけでも事業を引き継げられることは買手にとっても魅力となります。
昨今、不動産業者数は数年連続で増加しています。
新しく不動産会社を作ることが一般的ですが、不動産会社を買収して収益基盤を獲得することでスピーディに事業拡大を狙う買手さまは弊社の周りだけでも多くいらっしゃいます。
また、収益基盤だけでなく地主や大家さんとのつながりを作ることも大きなメリットになります。
その他にも、
・地域密着の屋号を活用できる
・取引先を引き継げる
・既存の什器や備品を利用できる
など、買収費用がかかってもプラスの面を大きく感じていただくことが多いのが不動産事業のM&Aです。
まず、売り手さまには最低限以下のような資料を準備をいただいております。
・確定申告書
・管理物件資料
・賃貸借契約書
など
これらをご準備いただいて、弊社で「事業概要書」を作成します。案件として買い手となる候補者さまにご紹介するときにこの資料を用います。
資料を作成するにあたり、売り手さまにヒアリングをしながら、私もこの事業に対する理解を深めました。候補者さまからはさまざまな視点から質問を受けることになるので、可能な限り理解をし、すぐに返答ができる状況を整えて、募集を開始します。
ヒアリングの当日には概要書を作成し終え、必要資料も整い、いよいよ募集開始です。
弊社では、いくつかの募集チャネルを用いて候補者さまにアプローチをしています。
・過去にご縁をいただいたお客さまに直接ご案内する
・弊社のホームページに掲載する
・M&Aのプラットフォームサイトなどを用いる
・広告等を利用する
譲渡金額は1,000万円で管理物件の事業譲渡として募集しましたが、1ヶ月もたたずに数名の候補者さまが興味を示してくださいました。
候補者の方々には事業概要書をご覧いただいたり、質疑応答を繰り返したりして事前に対象事業の情報をある程度ご理解いただくように進めています。
すぐにでもお話を進めたいという候補者さまがいらっしゃいまして、募集から1ヵ月程度で4者ほどの方々と面談の設定となりました。
候補者さまは、
・現在不動産業以外の会社に勤めていて、初めての事業をチャレンジする方
・既に不動産事業を展開しており、事業拡大を図る企業さま
・他の事業をメインに行っているが、不動産業に本格参入を考えていた企業さま
など、様々な背景や経緯をお持ちの方々にご検討いただきました。
普段はZoomなどを用いてオンライン面談を実施することも多いのですが、買手さまのご希望により対面での実施もありました。
その内1社の方がすぐにでも具体的に進めていきたいとのことで再度面談を実施しました。
売り手さま、買い手さまともに意気投合したようで、一緒にお仕事をしていきたいという話にもなりました。
買い手さまからは一緒に行う仕事(事業)の内容や報酬なども提示され、その内容に合意した売り手さまはこの方で話を進めると決断されました。
この時点で「基本合意」を売り手さま、候補者さまの間で締結します。
基本合意とは、簡単に言えばM&Aの中で、譲渡契約の成約に向けてこれから動いていきましょう、という意思表示のようなものです。
それまで不特定多数の候補者とやりとりをしていたものを、この方のみとのやりとりにする「単独交渉」のフェーズもこの基本合意後になることが一般的です。
基本合意を締結した後、M&Aの成立・完了に向けて本格的にさまざまな動きをすることになります。その中でも特に重要なことがDD(デューディリジェンス)、いわゆる「企業調査」です。
これは、労務や法務・税務などさまざまな面において、この事業を引き継ぐリスクがないのかをチェックするために行います。
場合によっては弁護士、会計士、税理士の方に入っていただくこともあり、規模も大小さまざまです。
今回は、法人ではないので引き継ぐ契約や負債などもなく、管理物件をどのように買手法人に移管させるか、ということが主な調整内容となりました。
ここで、買手様が想定していた売上を見込めない、ということが発覚し、改めて売上の状況や過去のデータを様々確認しましたが、結局事業展開を買い手様で構築することが困難となり、一旦ここで基本合意を解約しました。
また改めて候補者を探すこととなりましたがすぐにいくつか問い合わせがあり、不動産とは別事業をされたいた法人様から交渉を進めたいとの話をいただき上記スキームを経て再び基本合意を締結することとなりました。
今回は買い手様の当初イメージと基本合意後も大きな変化はなく、管理物件の引継ぎスキーム順調に合意まで進み、譲渡契約締結となりました。
管理物件の各大家様への挨拶回りもあるため引継ぎ期間は他の案件と比べて長めの6カ月程度を設定しました。
譲渡契約は締結済みであるので大家様にも説明がしやすい状態での引継ぎ作業となりました。
この譲渡契約成立まで、お問い合わせから8ヶ月程度の時間を要したことになります。
弊社のサービスをご利用いただく場合、募集開始から成立まで、概ね3ヶ月程度が平均してかかる期間になります。今回は大きな負債もあったため候補者が見つかるまでに少し時間がかかりましたが、候補者が見つかってからは1ヶ月程度でお話がまとまりました。
本件のように一度具体的な候補者とのお話が破断となれば初めから再スタートとなるのでトータル期間が長くなることもあります。
ある程度、譲渡のタイミングをイメージしているようであれば、そこから逆算してお問い合わせをいただければ、理想のM&Aを実現することができるかもしれません。
12月、ついに引継ぎの日を迎えます。
今回は、売り手さまが引き続き事業に携わり、事業所名(屋号)も継続することから、各大家様にとってはあまり大きな変化は無かったので引継ぎを拒否する(管理の委託先を変更する)大家様はいらっしゃいませんでした。改めて売り手さまと買い手さまで今後も一緒に頑張っていきましょう、という挨拶を行い、引継ぎ完了となりました、
数週間後にご連絡いただいた際も順調に事業を進めているとのご報告もいただきました。これからさらに活躍されることと思います。