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法人譲渡例その15|愛知の不動産会社|債権放棄に代えて疑似DESを行い譲渡

2024年8月31日
譲渡例(今までのケース)

はじめまして、不動産会社専門のM&A仲介サービス、レスマを運営する株式会社インフィニティライフの伊礼です。


弊社は自社でも不動産仲介業を営んでおり、M&A仲介のノウハウと掛け合わせて、不動産会社専門のM&A仲介サービスを提供しています。

アドバイザーも不動産業界に精通しており、宅建取得者も多くいます。業界ごとの色や特徴に合わせて的確にアドバイスをし、成約に導いています。


不動産会社を経営する方の中には、「自社を売却する」「事業を切り離す」「M&Aをする」ということは大きな会社がすることで、自分には関係がない…と感じている方が多くいらっしゃると感じています。


しかし、

・不動産会社を閉業したいが、従業員やお客さんのことを考えるとやめることができない

・体調面に不安があるが、引き継ぎ手がいない(後継者不足)

・別の事業に集中したい

という方にとっても、株式売却・持分譲渡・事業売却は1つの選択肢となります。売却やM&Aをすることとは、どのようなことなのか、それにより得られるものは何なのか、当ブログではご紹介していきます。


今回は、愛知県のとある不動産会社のM&Aをご紹介いたします。

売り手さまからお問い合わせをいただいてから、実際の譲渡に至るまでのプロセスを是非ともご覧ください。


不動産会社の概要

・事務所の所在地

愛知県


・業種

売買仲介


・従業員

1名:オーナー様のみ


・直近期売上高

0万円


・純資産

約▲130万円程度


★案件ページはこちらをクリック


会社の売却(M&A)を決めたきっかけ

売買仲介業として独立したが集客が上手くいかず、売上が全くたたなかったため


この売り手さまからご連絡をいただいたのは、2023年の10月ごろでした。

売上がたたずに固定費の支出だけが続いていく一方で、廃業を考えなければいけない、というときに弊社のサービスが目にとまり、M&Aを検討していただきました。


売り手さまは40代で、会社が完全につぶれる前に譲渡したいと考えていらっしゃいました。

不動産業を引き続きを頑張っていきたいという思いと新たな仕事を模索するべきかという葛藤もありましたので、基本的には譲渡して退任されたいと仰っていました。

お問い合わせから募集のスタートまで

売り手さまからはお電話でお問い合わせいただき、早速打ち合わせをされたいとのことで数日後にオンライン面談にてお話を伺わせていただきました。

M&Aを検討することが初めてとのことでしたので、会社の売却方法や交渉の流れ、相場の目安、ご準備いただく書類や資料など丁寧に説明をさせていただきました。

今回の売り手さまのようにM&A自体が初めてという方がほとんどですのこの初回のお打ち合わせでご不明点やご不安を解消していただけるようご案内しています。

詳しくお話を伺うと、今期は売上が全くなく、案件も無いため、1日でも早く譲渡して手出しを抑えなければいけない状況でした。

M&Aでは所有不動産や管理物件、引継ぎ人材が主な譲渡資産となりますが、今回は宅建業者免許のみが主な譲渡対象となりました。

ここで、「売上実績が無くても売れるのか?」とご質問いただきました。

負債があったり事業実績が無くても免許番号を引き継げることやすぐに事業を始められることは買手にとっても魅力となります。

昨今、不動産業者数は数年連続で増加しています。

新しく不動産会社を作ることが一般的ですが、不動産会社を買収して設立・免許取得の手間や時間を省略してすぐに始めたい、という買手さまは弊社の周りだけでも多くいらっしゃいます。

また、免許番号がいくつか増えた状態で始められることもメリットになります。

その他にも、

・既存の銀行口座を使用できる

・取引先を引き継げる

・既存の什器や備品を利用できる

など、買収費用がかかってもプラスの面を大きく感じていただくことが多いのが不動産会社のM&Aです。

募集開始〜基本合意まで


募集準備


まず、売り手さまには最低限以下のような資料を準備をいただいております。


・決算書や確定申告書
・定款、謄本
・賃貸借契約書

など


これらをご準備いただいて、弊社で「企業概要書」を作成します。案件として買い手となる候補者さまにご紹介するときにこの資料を用います。

資料を作成するにあたり、売り手さまにヒアリングをしながら、私もこの法人に対する理解を深めました。候補者さまからはさまざまな視点から質問を受けることになるので、可能な限り理解をし、すぐに返答ができる状況を整えて、募集を開始します。


募集開始、市場の反応


ヒアリングの当日には概要書を作成し終え、必要資料も整い、いよいよ募集開始です。

弊社では、いくつかの募集チャネルを用いて候補者さまにアプローチをしています。


・過去にご縁をいただいたお客さまに直接ご案内する
・弊社のホームページに掲載する
・M&Aのプラットフォームサイトなどを用いる
・広告等を利用する


譲渡金額は400万円で免許と事務所引継ぎができる案件として募集しましたが、1ヶ月もたたずに数名の候補者さまが興味を示してくださいました。


トップ面談〜基本合意

候補者の方々には企業概要書をご覧いただいたり、質疑応答を繰り返したりして事前に売手法人様の情報をある程度ご理解いただくように進めています。

すぐにでもお話を進めたいという候補者さまがいらっしゃいまして、募集から1週間程度で6者ほどの方々と面談の設定となりました。

候補者さまは、
・現在不動産業以外の会社に勤めていて、初めての事業をチャレンジする方
・既に関東圏で事業を展開しており、中部や関西へ事業拡大を図る企業さま
・他の事業をメインに行っているが、不動産業に本格参入を考えていた企業さま

など、様々な背景や経緯をお持ちの方々にご検討いただきました。

買い手様は愛知県周辺ではなく関東・関西エリアの方がほとんどであったため基本的にはWEB面談で実施しました。

数社面談したのですが、譲渡金額の折り合いがつかずなかなか具体的に話が進まずに破談となってしまいました。ここで売主様も、金額より早く譲渡することに方針を変え、だんだんと下げていき、最終的には思い切って100万円まで下げるとのことで条件変更を行いました。

変更するとすぐに新たな候補者が現れました。不動産業を独立開業されたい個人の方で、スピードを重視されていましたので売主様にとっても都合が良く、すぐに具体的な話へすすむことができました。


この時点で「基本合意」を売り手さま、候補者さまの間で締結します。

基本合意とは、簡単に言えばM&Aの中で、譲渡契約の成約に向けてこれから動いていきましょう、という意思表示のようなものです。

それまで不特定多数の候補者とやりとりをしていたものを、この方のみとのやりとりにする「単独交渉」のフェーズもこの基本合意後になることが一般的です。


DDから譲渡契約、決済まで


DD(デューディリジェンス)


基本合意を締結した後、M&Aの成立・完了に向けて本格的にさまざまな動きをすることになります。その中でも特に重要なことがDD(デューディリジェンス)、いわゆる「企業調査」です。


これは、労務や法務・税務などさまざまな面において、この企業を引き継ぐリスクがないのかをチェックするために行います。

場合によっては弁護士、会計士、税理士の方に入っていただくこともあり、規模も大小さまざまです。


今回は、買い手さまに公認会計士でもあるM&A専門家(FA)がいらっしゃたのでその方にDDを行っていただきました。

そこで、今回のタイトルにある「疑似DES」をする必要があるとの話が出てきました。売主様がこれまで会社に貸し付けている金員について債権放棄する予定でしたが、放棄すると売上と同等の「債務免除益」が発生し、税金の支払いが発生するという状況でしたのでこれを回避するために行うのが今回の疑似DESです。

貸付債権が700万円ほどありましたが、会社に同額の増資を売主様から行い、その資金で売主様に返済するという流れです。(疑似DES)

結果として資本金が700万円増え、売主様の持ち株数も応じて増加、貸付債権の解消となり、増えた株式も加えて譲渡、ということでこの課題を解決しました。

時折、この債権放棄による税負担がネックとなり買い手様が断念するということもありますが、一時的にキャッシュを用意することで解決できることもよくあります。今回は上手く解決でき、その他の条件交渉やDDもスムーズに進みましたので交渉開始から約2週間程度での成約となりました。


この譲渡契約成立まで、お問い合わせから半年程度の時間を要したことになります。


一般的に譲渡までどのくらい時間がかかる?


弊社のサービスをご利用いただく場合、募集開始から成立まで、概ね3ヶ月程度が平均してかかる期間になります。今回は大きな負債もあったため候補者が見つかるまでに少し時間がかかりましたが、候補者が見つかってからは1ヶ月程度でお話がまとまりました。


ある程度、譲渡のタイミングをイメージしているようであれば、そこから逆算してお問い合わせをいただければ、理想のM&Aを実現することができるかもしれません。

決済(クロージング)


決済当日

7月、ついに決済の日を迎えます。

今回は、売り手さまが一時的に代表を継続、事務所移転なし、ということで株式だけを引き渡す形となったので引き渡す物品はほとんど無く、今後の動きの打ち合わせを軽く行い、決済を完了しました。

売主様は一時的に代表を継続した後は、ご自身で別のお仕事をされると仰っていました。売主様も買主様もそれぞれの領域でこれからさらに活躍されることと思います。