M&Aのプロセスで最も重要といってもよいのがエグゼキューションです。オリジネーションである程度の形ができた案件を引き継ぎ、M&Aを実現するための活動だからです。
今回は、エグゼキューションの定義や重要性、流れ、成功させるための4つのポイントについて解説します。
企業のM&Aやエグゼキューションに興味がある方は、ぜひ参考にしてください。
M&Aのフェーズの一つに「エグゼキューション」がありますが、どのような意味の言葉なのでしょうか。
ここでは、定義や似た言葉であるオリジネーションとの違いについて解説します。
エグゼキューションは、M&Aの過程で使われる言葉で、主に実施や実行を意味します。具体的には、M&Aの手続きを進めていく一連の流れを指します。
M&Aにおけるエグゼキューションは、以下のような流れで進みます。
つまり、M&Aの交渉相手が決まってから、最終的な手続きが完了するまでの一連の過程が、エグゼキューションと呼ばれているのです。
オリジネーション(案件組成)とは、案件の発掘や売り手と買い手のマッチングです。
オリジネーションのポイントは以下のとおりです。
オリジネーションは、M&Aの種まきや準備の段階であり、M&A取引の出発点となるもので、エグゼキューションの前段階の行動です。
エグゼキューションは、M&Aを成功させるための重要なフェーズです。ここでは、重要な2つのポイントについて解説します。
M&Aを実行する際には、理想的な計画や戦略だけでは不十分です。実行段階では、いろいろな問題や制約が発生します。
これらの障害を乗り越えながら、買い手と売り手の両者の合意を得るための活動がエグゼキューションです。
エグゼキューションが上手くいかないと、M&A全体が失敗に終わるリスクがあります。
例えば、買収価格が高すぎたり、契約書にミスがあったりすると、買収する企業の利益が損なわれる可能性があります。
企業が合併する際、企業文化の違いがよく障害となります。
合併後も文化の対立が続くと、M&Aの効果が薄れてしまいます。
そのため、合併の協議段階で、スムーズに組織と文化を一体化するための対策を考えることが重要です。
ここからは、エグゼキューションの流れを3つのパートに分けて解説します。
M&Aのスキームとは、M&Aを実施するための手法のことです。ここでは、5つのスキームを取り上げて紹介します。
スキーム | 概要 |
株式譲渡 | ・株式を譲渡することで会社の経営権を取得する方法 ・手続きが比較的容易 ・短期間で完了 ・中堅・中小企業で多用 |
事業譲渡 | ・会社が持つ事業の全部または一部を他の会社に売却 ・事業を構成する資産(例:建物、在庫、社員、顧客)が対象 ・負債も譲渡 |
合併 | ・複数の会社が法的に1つになる ・吸収合併:一方の既存会社がもう一つの会社の権利義務を承継 ・新設合併:売り手・買い手ともに法人格が消滅し、新会社が権利義務を承継 |
株式交換 | ・相手を完全子会社化する際に用いる手法 ・相手企業の発行済み株式の全てを親会社が取得現金ではなく株式を交換する |
株式移転 | ・複数の企業を再編し、持株会社を作る際に用いる手法 ・新たに設立する持株会社が、子会社の株を取得 |
これらのうち、不動産会社のM&Aで良く用いられるのは株式譲渡です。
しかし、個人事業主の場合は、株式譲渡を選択することができないため事業譲渡を採用する場面が多くなります。
M&Aのスキームが決まったら、企業価値の算定(バリュエーション)が行われます。バリュエーションの方法は大きく分けて3つです。それぞれの内容を見てみましょう。
インカムアプローチは、企業の「稼ぐ力」に着目して企業価値を算出する方法で、将来的な収益力によって企業価値を算定します。
計算する際は、将来の利益とリスクを考慮した「割引率」を用います。
割引率はリスクが高いほど大きくなります。
インカムアプローチには主に3つの手法があります。
DCF法(ディスカウンテッド・キャッシュフロー法) | 企業が将来どれだけの収益を出せるか予測し、その収益を今もらえる場合の価値に換算して、企業全体の価値を計算する方法 |
配当還元法 | 企業が今後支払うと考えられる配当金の価値を、現在時点での価値に変換して企業全体の価値を計算する方法 |
収益還元法 | 企業が得る収益を、その規模に応じた割引率を使って今の価値に変換し、企業全体の価値を求める方法 |
上記の手法を用いることで、将来の成長が期待される企業の価値を適切に評価することができます。
ただし、将来の予測は不確実性を伴うため、適切な割引率の設定など、慎重な分析が必要です。
マーケットアプローチは、M&Aの対象となる企業と似た上場企業の株価や財務状況を参考として、企業価値を評価する方法です。
市場のデータをもとに評価するため、客観的に評価できますが、新規事業や似た業種がない企業の場合は利用できません。
また、個別の事情を反映しにくいため、売り手企業から見て評価してほしいポイントが評価されないというデメリットがあります。
コストアプローチは、貸借対照表の純資産価値をもとに企業価値を評価する方法です。
現在の資産価値を正確に評価する方法ですが、企業の将来性や市場の状況などを踏まえた評価にはなりません。
帳簿が誤っている場合、正確な評価にならないというデメリットもあります。
バリュエーション終了後、M&Aの交渉が始まります。
交渉で重要部分について合意が得られたら、基本合意書が締結されます。
基本合意書の内容は以下のとおりです。
基本合意書の締結後、各種デューデリジェンスが行われ、最終契約の締結、クロージングと進みます。
エグゼキューションを成功させるには、いくつかのポイントがあります。ここでは、4つのポイントについて解説します。
売り手と買い手の双方が納得できる形にすることは、極めて重要です。
売り手はできるだけ高く売りたいと望み、買い手は効果のある投資であることを望みます。
両者の思惑がずれたままで話し合いが進むと、どこかで認識のずれが表面化し、M&Aが破綻してしまいます。
エグゼキューションの段階で、双方の認識を一致できるよう努めましょう。
手続き漏れがないよう、徹底した確認が必要です。
M&A手続きの中には法的なものも含まれているため、必要な手続きに漏れがあるとM&Aそのものが無効とされる恐れがあります。
一つひとつ計画を立て、各段階で慎重に確認を入れることで漏れを防げます。
関係者のスケジュール調整も、エグゼキューションで重要なポイントとなります。
各企業の経営者や担当者は、自社の業務に支障が出ない範囲でスケジュール調整を行います。
また、専門家とのスケジュール調整もあるため、日程調整が非常に重要となるでしょう。
M&Aアドバイザーや弁護士、公認会計士、税理士など専門家との相談も必要です。
企業の価値評価や契約書の作成などは専門性が高いため、知識と経験が必要です。
特に、税務・財務・法務などのデューデリジェンスの際は専門家の協力が必要不可欠です。
今回はエグゼキューションについて解説しました。
M&Aのスキーム決定から企業価値の算定、基本合意、その後のデューデリジェンスまで幅広い内容を含むエグゼキューションは、M&Aの最重要部分といってもよいでしょう。
エグゼキューションを円滑に進めるには、専門家のサポートが必要不可欠です。
ReSMAは、不動産会社専門のM&Aプラットフォームで、これまで多くのM&Aを成功させてきた実績を有しています。
事業の売却を検討している方は、ぜひ一度、ReSMAに相談してみてはいかがでしょうか。
詳しくは、ReSMAに直接お問い合わせください。
★M&Aを検討している、相談したい不動産会社の経営者さまはこちら
★不動産会社を買収したい方はこちら
→新着案件を最速配信、公式LINEアカウント